COLUMN

くらしのドクターコラム

老舗電気工事会社が挑むコロナに負けない新ビジネス|熊本の電気工事

2020年3月から日本各地に広まったコロナで多くの企業が存続の危機にあります。
業種別に見てみると倒産件数が一番多いのが飲食業であり、実は2番目が多いのが建設業です。

その主な原因は、景気が悪くなると民間企業が建設投資を抑える傾向があるからです。
景気に左右されやすい建設業で、新しい事業に活路を見出そうとするのが
熊本の企業である九州電設株式会社です。

九州電設(株)はどんな会社

昭和51年に熊本でたった3人からスタートした小さな電気工事会社でした。
バブル崩壊、リーマンショックなどで景気の影響を受けながらも
「社員を大切にし、お客様から信頼され、社会に貢献できる企業を目指します!」
という経営理念の元、地域密着で成長を続け、現在は社員数107名。

そのうち94名が電気工事職人で熊本県No1の在籍数を誇っています。
約束された未来はないこれまで地元優良企業として社員の幸福を第一に考え、安定した成長を続けてきました。
しかし、コロナで”約束された未来がない”と痛感しました。
コロナで当社の経営課題として「景気に左右されやすい大口工事に依存していること」が
あることに気づきました。

そして、経営においてはコロナのみならず大きな変化(人口減少、テクノロジーの進化)に
対応していかなければ、波に飲み込まれてしまう。

経営をシフトして、未来を作り出す新たな動きが必要であると感じました。

自社の課題と社会課題の同時解決

新しい事業の名前は、「くらしのドクター」

日本が直面する社会課題「少子高齢化」

いよいよ団塊世代も後期高齢者となり、4人に1人が高齢者です。
経済構造にも大きな変化をもたらします。
そんな高齢者の「住」環境はどのようになっているのでしょうか。
高齢者の多くは、最期まで住み慣れた家での生活を希望していますが、
ほとんどの家が築20年以上で、耐震、バリアフリー、省エネ性能など
様々な問題を抱えています。

リフォームには踏み切れない高齢者が多数

問題を抱えていても実際にはリフォームをしないという
意見が多数を占めています。その理由として、

「あと何年生きるか分からないのにお金をかけてリフォームしても…」
「悪徳業者による詐欺被害も増えているし心配」
「どこに頼んでいいのか分からない」

などが挙げられます。

サービス提供者の問題

家や住居が高齢化していくと同時に、工務店や電気屋さんも高齢化しており、
業界としても大きな問題を抱えています。また、大規模なリフォームとなれば
売上や利益を確保できるが、少額のちょっとしたリフォームとなると
売上や利益も少なく、オペレーションでも非効率であることから、
消費者への積極的な提案をしていません。
仕事の依頼があっても、断ったり、採算に合うようにするために
詐欺とも思われても仕方がない金額で販売しています。

くらしのドクター事業

一方でくらしのドクターは、採算度外しで高齢者の困りごと解決を行っていきます。
そのため高齢者が必要としている5万円以下の少額工事を積極的に提案します。

事業継続に向けた自社努力

昨今、「SDGs」が叫ばれていますが、当社では「社会性」「独自性」「経済性」
事業活動には必要で、そのバランスが必要であると考えています。
どんなに社会性がある取り組みでも、他の会社でもできる取り組みであると
社会へのインパクトとしては弱い、お金が循環していく仕組みを作れなければ
継続していくことができません。くらしのドクター事業では、高齢者の困りごとを
少額リフォームによって解決するという社会性熊本県の電気工事士在籍数No1だから
できるという独自性
それに加えて自社努力による原価低減による経済性を実現させました。

自社努力としての具体的な取り組みは、
・エリアを絞ることにより、人員配置やルーティングの効率化。
・材料の仕入れ、オペレーションの効率化。
・緊急性の低い工事については、こちらから日時を指定したこと。
・社内体制を大きく見直して、くらしのドクター事業部を新設したこと。
など様々な取り組みを行なっており、現在も試行錯誤を続けています。

一回のお付き合いを、一生のお付き合いに

スタート時は月1件だったのが、月20件の受注に2020年12月よりスタートした事業ですが、少しずつですが着実に
お客様や地域の信頼を集めており、それが数字にも現れてきています。
まだまだ困っている高齢者の方は多くいるので今後も拡大していくと見ています。

どんなに件数が増えても変わらないこだわり

それは、「目の前のお客様に喜んで頂く」ということです。
目の前の一人のお客様との感動や信頼の積み重ねが
「一回のお付き合いを、一生のお付き合いに」してくれるのです。

だから、もう一度頼みたいと思ってもらえる適正な価格高い技術力
質の高いサービスが必要なのです。

実際の作業に同行してみた

ブルーの作業着をきた女性スタッフが、とあるお宅を訪問します。
中から出てきたあばあちゃんが笑顔で出迎えてくれました。
「よく来てくれたね」どうやら、電気の調子がおかしくて連絡してきたようです。
スタッフは落ち着いたようで作業を開始しました。
次から次に道具を取り出して、高いところも腰道具を背負って
スライダーを使って3メートル以上の高さを調査しました。
1時間ほどの手際の良い作業で問題を解決しました。
ついでに家中の設備を点検して、世間話をして帰っていきました。

高い技術力

まるで魔法使いのようにサクッと解決するスタッフですが、それには秘密があります。
当社では、大型施設、一般住宅の新築・リフォームと幅広く対応しているため、
建物の構造を熟知しています。設備業者に依頼をしたけど、
配線の関係で追加工事が必要になった経験がある方もいると思います。
当社では、1社で設備の手配と取り付け、加えて電気配線を行えることが大きな強みになっています。

「機器代+工事代」でのトータル金額でお客様にお伝えできることが安心感につながっています。

セールスではなく親切

元々、職人が主体の会社で営業活動には力を入れていない会社でした。
事業スタート時はそれをどう補うのかと考えていました。

当社のスタッフの特徴は以下のようです。

・技術の知識は豊富であるが、接客・営業トークが不得意
・平均年齢は35歳と若く、職人ということもあり真面目。少し恥ずかしがり屋。

しかし、現場に行ってみると職人さんは、セールスはできていませんでしたが
工事をしたついでに点検や、重たい荷物を運ぶなどのちょっとしたお手伝いをしていました。

この時に大事なのは、「セールスではなく親切」であり、
経営としては「売った」ではなく、「売れた」という感覚が大事であると感じました。
そのためスタッフへの売上ノルマはありません。
お客様と仲良くなること、自分の子供のように親しみを持って
接してもらえることを目標にしています。

これから

2021年3月に「第11回日本でいちばん大切にしたい会社」審査員特別賞を受賞しましたが、
新規事業のスタートを受けて、全社での社員の働きがい向上に努めていきます。

お客様からの「ありがとう」がスタッフを成長させ、心理的満足度を高めてくれているのをみて、
スタッフ同士での「ありがとう」も頻繁に使うようにしました。

社員間のコミュニケーションもスムーズになり、さらに生産性が向上し始めています。
また、働き方についてもくらしのドクター事業は、大型工事とは違い短工期であることから
自由な働き方を実現させ、子どもを持つ女性スタッフにとっても、
仕事と育児を両立を応援する事業となっています。
さらに、地域で育った若者に魅力的な仕事を地元企業が提供することが
都市部への人材の流出を防ぐことにもつながります。

高齢者、地域、地元中小企業が抱える問題はまだまだ多くあります。
当然、一人では一社では解決できません。
自治体や異業種との協力関係を強めていき
スピード感を持って取り組んでいきます。

「くらしのドクター」という事業名は、「社会や会社の病気を治すのがビジネス」
考えて付けました。くらしのドクター事業を通して、高齢者の経済的、身体的な負担、
介護者の負担を減らしていくことで、少子高齢化社会の日本経済を支えていきます。

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