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【解説】V2H機器導入に必要な機器や工事費用とは?|くらしのドクター

電気自動車を蓄電池として活用できるシステム、「V2H」機器。

V2H機器とは電気自動車と家庭をつなぎ、給送電を行うために必要な機器で「V2H充放電設備」「EV用パワーコンディショナ―」とも呼ばれています。

そんな、V2Hを停電対策や電気代節約に期待したいけれど、導入費用はどれくらいなのでしょうか。

今回は、V2Hに必要な機材や工事費用の相場について解説します。

 

V2H導入には専用の機器が必要?

V2Hを導入するためには、専用の機器が必要になります。

必要な機材、あるとよい機材は次の3つです。

V2H機器

EVやPHEVの大容量バッテリーに蓄えられた電気は、乾電池と同じ「直流」という種類です。一方、家庭用の電気は「交流」です。つまりEVやPHEVの電気は、そのままの状態では家庭で利用できません。

そこで、「直流から交流」「交流から直流」に変換するための機器が必要になります。それがV2H機器です。

また、V2H機器は、電力会社から送られる電気や、自宅の太陽光発電で作られた電気を、条件にあわせて賢く振り分けることもできます。

V2Hに対応するEVまたはPHEV

現在のところ、すべてのEVやPHEVがV2Hに対応しているわけではありません。また、V2H機器の機種によって、接続できるEVやPHEVの車種が異なります。導入するときには注意しましょう。

〈表〉V2H機器に対応するEV・PHEVの一例

日産 リーフ、リーフe+、e-NV200、アリア、サクラ
三菱自動車 eKクロスEV、エクリプスクロス(PHEVモデル)、アウトランダーPHEV、i-MiEV、MINICAB-MiEV VAN、MINICAB-MiEV TRUCK
トヨタ プリウスPHV、bZ4X
ホンダ Honda e
ヒョンデ IONIQ 5
スバル SOLTERRA

※ニチコン(EVパワー・ステーション)対応車種の場合

太陽光発電システム

V2H導入の必須条件ではありませんが、V2Hのメリットをフル活用するためには、太陽光発電との連携が推奨されています。太陽光発電で作られた電気を利用することで、カーボンニュートラルへの貢献や、電気代の節約が期待できるからです。

逆に言うと、すでに太陽光発電を利用している家庭は、V2Hの導入がおすすめです。また、V2Hの導入をきっかけに太陽光発電の設置を検討してもよいでしょう。

V2Hを導入するための4ステップ

V2Hを導入する際、特に注意が必要になるのは、V2H機器の購入と設置です。

屋内配線が複雑なだけでなく、V2H機器を設置するためには電力会社からの承諾が必要になるため、V2H機器の販売・施工を行っている施工業者に依頼するのが基本となります。なお、住宅を新築する場合は、ハウスメーカーが建設時に対応してくれることもあります。

V2H機器を自宅に設置し利用するまでの手順は、以下のとおりです。

 

(ステップ1)施工業者に依頼し、V2H機器を決定

V2H機器は特殊な機械ですから、一般には販売されていません。また、設置して配線を接続するためには電力会社からの承諾が必要です。そのため、設置には施工業者に依頼を行い、機器の種類を決めます。

(ステップ2)施工業者による現場調査

施工業者が現場(自宅)を訪問し、工事費用の見積もりを行います。その際の打ち合わせで、V2H機器の設置場所や配線の経路などが決まります。

(ステップ3)工事契約(各種の申請)

現場調査が完了し工事の契約が結ばれると、V2H機器を家庭で使用するための申請を行います。申請は、施工業者側で代行してくれる場合がほとんどです。申請が完了するまでの期間は、すでに太陽光発電を設置しているかどうかで大きく変わります。

〈表〉各種申請期間の目安

太陽光発電が設置されていない住宅
必要な申請:電力申請
申請期間:約1~2カ月

 

太陽光発電が設置されている住宅
必要な申請:電力申請、事業計画変更申請
申請期間:約5~6カ月

 

(ステップ4)設置工事/配線・結線の電気工事

機器の設置は、基本的に各種の申請が完了した後で実施されます。工事が完了すれば、V2Hを利用することができます。

 

V2H機器を選ぶ際のポイントは?

V2H機器は、製品によって性能が異なります。価格の違いは、主に性能の違いによって生じるといってよいでしょう。製品のスペック表を見る際に、チェックすべきポイントを紹介します。

〈表〉代表的なV2H機器「EVパワー・ステーション(ニチコン)」のスペック例

  スタンダードモデル
(VCG-663CN3)
プレミアムモデル
(VCG-666CN7)
税込本体価格 54万7800円 87万7800円
タイプ 系統連系型(JET認証済)
停電時の電力供給 特定負荷型 全負荷型
停電時出力 3kVA未満 6kVA未満
倍速充電 対応
グリーンモード 対応
リモート操作 ×(本体スイッチのみ) 〇(スマホアプリによる操作が可能)
保証期間 2年 5年

※2022年7月時点

 

Ⅰ.タイプ

V2H機器のタイプは、「系統連系」型「非系統連系」型の2種類あり、「系統連系」型のV2H機器が市場では主流となっています。

①「系統連系」型

V2Hで扱う電気の系統はEVやPHEV(のバッテリー)、電力会社(から送られる電気)、太陽光発電(で作られる電気)の3つです。

「系統連系」型のV2H機器では、3つすべての系統を同時に利用することができます。

停電時にも、太陽光発電からEVやPHEVに充電ができるため、昼間に発電された電気をEVやPHEVに貯めておき、夜間に家庭へ給電することで、停電が続いても電気を使い続けることが可能になります※。

 

※ただし、VCG-663CN3は系統連系型ですが、停電時に太陽光発電の余剰電力をEV・PHEVに充電することができません。

 

②「非系統連系」型

一方「非系統連系」型は、EVやPHEV(のバッテリー)、電力会社(から送られる電気)、太陽光発電(で作られる電気)という、3つの系統を同時に利用できません。

たとえば、電気を家庭に給電する際に、「非系統連系」型のV2H機器では3つの系統のうち、ひとつしか選ぶことができません。

EVやPHEVから家庭に給電しているときには、電力会社や太陽光発電からの電気が利用できないということになります。また、「非系統連系」型のV2H機器は、停電時に太陽光発電からEVやPHEVに充電ができない点にも注意が必要です。

Ⅱ.停電時の電力供給

V2H機器の機種によって、EVやPHEVの大容量バッテリーに蓄えられた電気の使い方が異なる点にも注意が必要です。電気の使い方は「特定負荷型」「全負荷型」の2タイプがあります。

①特定負荷型

「特定負荷型」とは、停電時に使用したい電気の送り先(回路)をあらかじめ決めておくタイプのことです。回路が限定されるので、たとえば停電時には照明や冷蔵庫には電気が供給されるが、エアコンやIHクッキングヒーターには供給されないなど、使用できる部屋や機器が限定されます。回路の中にコンセントが含まれていれば、延長コードを使い家電に給電することもできます。

②全負荷型

「全負荷型」は、家全体の回路すべてを電気の送り先にしておくタイプです。停電時は家中すべての電気を使用できますが、プラグが差しっぱなしの家電があると待機電力がかかってしまうため、利用しない家電はプラグを抜いて節電するほうがよいでしょう。

Ⅲ.停電時出力

停電時に、V2H機器から給電される電力の出力値のことです。最大出力は3kVA、6kVAなど機種によって差があります。数値が高いほうが、より多くの電気を使用できます。

Ⅳ.倍速充電

V2H機器の機種によっては、EVやPHEVの充電時間を大幅に短縮することができます。一般的な200V充電用コンセント(3kW)と比較した場合、最大2倍(6kW)の速度で充電ができます。また、家庭内で使われている消費電力をリアルタイムでモニターし、それに合わせて充電電力を調整する機能もついているため、電気の使い過ぎでブレーカーが落ちる心配もありません。

Ⅴ.グリーンモード

太陽光発電の自家消費を優先するモードのことです。家庭内の消費電力量が太陽光発電の発電量より多い場合は電力会社から電気を購入し、逆に太陽光発電より少ない場合は余った電気をEVやPHEVに充電したり、電力会社へ売電したりという切り替えを自動で行ってくれます。

V2H機器の設置費用の相場を機種別で紹介

Ⅰ.購入する場合

V2H機器の設置工事にかかる費用は、設置する機種や配線の長さ、さらに太陽光発電の有無によって変わります。駐車場が隣接している一般的な戸建住宅の場合なら、機器代・工事代含め総額は約90万円以上になります。駐車場が自宅から離れておりV2H機器と自宅とを接続するためケーブルの長さが余分に必要な場合などは、追加の費用がかかります。

ここでは、参考例としてニチコン「EVパワー・ステーション」の設置工事費用の目安を紹介します。

〈表〉設置工事費用の一例

  スタンダードモデル
(VCG-663CN3)
プレミアムモデル
(VCG-666CN7)
本体価格 54万7800円(税込) 87万7800円(税込)
工事費 約30~40万円(税込)

※2022年7月時点

 

なお、新規に太陽光発電システムを導入する場合には、ソーラーパネルの本体費用に加え、設置工事費用等が別途必要になります。

 

Ⅱ.定額利用する場合

V2Hを導入する際に、機器購入のほかに定額利用するという選択肢もあります。

たとえば、東京電力グループのTEPCOホームテックが提供する定額利用サービス「エネカリ」を利用すれば、工事費を含む導入の初期費用が0円になるので、手軽にV2Hを導入することができます。

〈表〉「エネカリ」月額利用料(参考金額)

  スタンダードモデル
(VCG-663CN3)
プレミアムモデル
(VCG-666CN7)
利用料※ 月額1万380円(税込) 月額1万3500円(税込)

※契約期間10年の場合。2022年7月時点の利用料金。

 

10年間の利用料と比べると、V2H機器を購入したほうが安価になりますが、購入の場合は自然災害による故障時やメーカー保証期間後などに自己負担リスクがあるのに対し、エネカリなら契約期間中ずっと機器保証・工事保証・自然災害補償がついているというメリットがあります。

V2Hを導入する際には、購入とエネカリ両方のメリット・デメリットを比較したうえで、目的にあった選択をするとよいでしょう。

 

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